3. 経済学の分析手法
数理的な解決
大学で経済学を学んでいない人に得てして言えることだが、彼らは現実の経済問題を数理的に解決する、という近代経済学の手法に馴染みがないように思われる。
もちろん、経済学は文系だが数学を駆使する学問である、という認識はあるだろう。しかし、具体的に数学をどのように用いているのか、という事までは把握していないはずだ。
ここではそれらについて述べる事とする。
現実問題を数理モデルとして置き換える
何らかの自然現象を解き明かしたいと思ったとき、科学者達は「実験」を繰り返すことによって、現象の解析を行ったり、問題の解決を図ったりする。
しかし経済学者が何らかの経済現象を解き明かしたいと思っても、残念ながら現実の経済では「実験」が困難である。
ではどうするのか。
この困難を乗り越えるアイデアは至って簡単で、現実で実験が出来ないなら、現実によく似た『模型』を作って、そこで実験すれば良いじゃん!という事である。いわば現実の「モデル化」だ。
つまり、現実の経済問題を、モデル化を通して数学的な問題として置き換えるのである。
そして数学的な問題を解き、そこで出た結論を現実の問題のものと照らし合わせることで、経済問題の解決を図るというやり方を取る。
分かりやすい例
このような手法は馴染みがないかも知れないが、簡単に言ってしまえば数学の「文章問題」と同じである。
我々は小中学生のときの算数・数学の問題で、「文章問題」というのに幾度となく取り組んできたはずだ。
例えばこんな問題を考えよう。
AさんとBさんがスーパーへ買い物に出かけました。
Aさんは、リンゴ3個とミカン7個を買い、全額で870円でした。
一方Bさんは、リンゴ9個とミカン5個を買い、全額で1210円でした。
リンゴ1個とミカン1個の値段をそれぞれ答えなさい。
これの解答は以下のようである。
リンゴとミカンの値段をそれぞれx,yとおいて連立方程式
3x+7y=650
9x+5y=1150
を立てる。これを解くと、x=100, y=50である。
したがって、リンゴの値段は100円、ミカンの値段は50円である。
具体的世界と抽象的世界
最初の問題文のリンゴミカンうんぬんの部分は、まだ現実的で具体的な事象である。
しかし、解答の値段を文字において連立方程式を立てた段階は、数学的で抽象的と言える。何故ならば、ここではリンゴやミカンという概念が一切なくなり、完全に数学の世界の中に居るからだ。
そして数学の世界で得られたx=100, y=50という結論を、現実の問題と照らし合わせ、リンゴ・ミカンの値段として最後に具現化している。
(青くしているのが現実の世界で、オレンジ色の部分が数学の世界として表しているつもり)
簡単な連立方程式の文章問題ではあるが、現実の問題 → 数学的問題に置き換える → 数学的問題を解く → 得た結論を現実の問題に応用、という一連の作業が行われているのがよく分かる。
以上の議論を図にするとこんな感じである。

まず、現実の経済的事象を数理モデルに置き換える。(モデル化)
そして、数理モデルの中から有用な結論を得る。
最後に、その数学的な結論を"経済学的に解釈"し、現実の説明を図るのである。
以上の手法に対する諸批判
ここまで、近代経済学の主な分析手法を述べてきた。
しかし、このような数理モデルを使った分析に対する批判は実際、数多いものがある。
次回からは、そのような批判のうち典型的なものを取り上げて、少しずつ反論を試みていきたい。