1. 経済学の一般的なイメージと実態の乖離
モチベーション
大学で学ぶ経済学(特に"近代経済学")と、世間で言うところの"ケイザイガク"のイメージの間には、大きな乖離が存在しているのが現状である。
特に、経済学の分析対象と分析手法についての理解に乏しさを感じる事が多い。
経済学ほど、世間でのイメージと実態の乖離が大きい学問も珍しいものだ。
そしてそれと平行して、世間では経済学に対する"謂われのない批判"が横行している。
本コラムは、そのような偏った認識を正してもらう事を目的としている。
経済学の分析対象に関する一般的なイメージ
貴方は、"経済学者"を目の前にしたときに何と声をかけるだろうか。
おそらく大抵の人が、次のように言うだろうと思われる。
「先生!何とかして日本の景気を良くしてください」
「これから先の"株価"や"景気"はどうなると思いますか?」
「○○が起きた場合の経済効果ってどのくらいですか?」
「経済学者って儲かるんですか?」
つまるところ、"経済学が取り扱う問題"(分析対象)に対する一般的なイメージは、次のようなものなのだろう。
- 好不況時の適切な景気対策
- 株価、為替、景気の将来的な予測
- ある政策や出来事の持つ"経済効果"の試算
- 金融市場におけるマネーゲームでいかに儲けるか
もちろん、そのような認識は決して誤りではないので安心してほしい。
しかし、全ての経済学者がこのような問題ばかりを扱っている訳ではないし、実際これらの問題は経済学の中のほんの一部分に過ぎない。
これらを経済学のメイン・テーマに据えるというのは、あまりにも偏った見方である。経済学は、もっと広範な対象を扱う学問なのである。
なぜ偏ったイメージが横行するのか
まず経済学という学問自体が、大学の経済学部に入って初めて学ぶものである、という所に大きな原因がある。
もちろん我々は、新聞やテレビで日常的に経済のニュースに触れている。(株価がどうだとか、金融政策を行っただとか)
また高校の政治経済の授業では、日本経済の歴史や、著名な世界の経済学者の思想、いくつかの経済用語・・・、を学ぶ機会がある。
その過程で、経済学に対する、何らかのイメージが形成されていくだろう。
しかしそのようなイメージは所詮、具体的な話題で形作られたものに過ぎず、大学で学ぶような高度に抽象化された経済学の内容とは全く異なるものである。
大学で経済学(近代経済学)を学ばない限りは、経済学に対するイメージは決して変わらないだろう。
広義の経済学と、狭義の経済学
下図は、後々のページで取り上げられる図であるが、このページのまとめのために、あえてここで前掲する。

上図のオレンジ色の部分は、"数学的な過程"を表している。
大学で学ぶ経済学(近代経済学)は、具体的な経済問題を数理的手法を用いて論理的かつ客観的に分析するのが特徴的であり、上図のオレンジ色の過程を含んだ学問である。
一般には馴染みがない経済学だろうが、大学以上で経済学と言えば"近代経済学"を指すと言っても良いほどなので、このようなオレンジ色の過程を含む経済学を、図では「狭義の経済学」とした。
一方で、世間の経済学のイメージは全て具体的な事柄によって形成されたものである。
すなわち、一般的に連想される経済学とは、上図の下部にある"具体的世界"のみで議論が行われるような学問であろう。
一般にはこちらの経済学の方が馴染み深いだろうが、オレンジ色の過程を含まないという事で、図ではそれらを「広義の経済学」の一つとして表現される。
まとめ
イメージと実態の乖離が起きるのは、双方が見ている"経済学"がそもそも異なっている、という所に主に原因がある。
では次のページ以降で、狭義の経済学が分析対象とするものや、その分析の手法を見ていただこう。
近代経済学・・・ようするに、ミクロ経済学やマクロ経済学のこと。